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「あの、ところで何の御用で?」
「あぁ、俺が呼んだんだったね。ごめんごめん。」
いけないいけない。紗奈ちゃんがあまりにも可愛くて、竜助を呼んだ目的を忘れるところだった。
「父上の部屋を綺麗にしたいから、手を貸してくれる人を探しているんだよ」
赤の部屋を指差すと、紗奈ちゃんの顔が一瞬で真っ青になった。意識を失うのを我慢したかな?下唇をグッと噛みしめて竜助の腕にしがみついた。
「あっ……こ、怖い。すみません、私は……手伝ってくれそうな人、呼んできます……あの、すみません。ごめんなさい」
「紗奈、謝り過ぎだよ。紗奈だけじゃ心もとないですから、おいらも一緒に行ってきます」
謝るのが癖になっている紗奈ちゃんの頭を撫で、扱いに慣れている竜助は苦笑する。
また小さく「すみません」と呟いた紗奈ちゃんは、乱された髪を押さえて顔が真っ赤っか。あれれ?竜助はどうかわからないけど、紗奈ちゃんは竜助に気がありそうかな?
仲睦まじい。2人の年齢的には似合わない言葉だけれど、素直にそう思える。微笑ましくて、つい笑みがこぼれた。
「もう光秋様、何を笑ってらっしゃるんですか」
「いやぁ、ごめんごめん。じゃあ俺はここにいるから、人集めお願いしますね」
「はい!あ、物騒ですから、くれぐれもお気をつけてくださいね。何かあったら叫ぶか大きな音を立てるか、皆を呼んでください」
竜助はそう言い残すと、紗奈ちゃんの手を引いて駆けて行った。紗奈ちゃん、あたふたしつつもどこか嬉しそう。
明るくて元気なのはいいけど、最近はより一層竜助が和之さんに似てきた気がする。
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