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窓の外の雨脚はまた強まり始めていた。
雨音だけが二人とこの薄暗い空間を占めていく。
駿一は男を見上げたまま、ただゴクリと唾液を飲み込んだ。
男は顔を近づけ駿一の唇に吐息をかける。
「なあ?」
そう言うと、駿一の返事も待たずに堰を切ったかのようにまたそこを貪り始める。
『…私は、何も知りません』
『明日から来なくていい』
『おまえは一族の恥だ!』
男の言葉に、唇の感触に、駿一の脳裏に様々な声が蘇る。
(俺は…死にたかったのか…)
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