演劇部のエース

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明確な理由を聞いて、一葉は漸く落ち着いた。 言葉の通り、女優になることを目指しているニイナ。 演技にはかなり貪欲で、この3年間色々なことをやって来たな…と、思い出が蘇る。 「喜びなさい、光栄に思いなさい。未来の大女優のファーストキスを捧げるんだから」 「はいはい」 そっと、顔を近付ける。 目を閉じると脳裏に浮かぶ、ニイナ1人だけでステージに立った最後の文化祭。 照明、音響等の裏舞台は一葉が担当した。 それは……表面的に見れば、ニイナだけしか居ないステージだったかもしれない。 しかし…声、動き、ニイナの演技が魅せた。 まるで何人もの配役が立ち並び、演じているかのように。 「っく…」 一葉は泣いた。 押し当てられた、震える唇の感触で。 様々なことを思い出して。 涙が止まらなくなった。
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