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「ほらニイナ、新しいドラマ始まったよ」
一葉の傍らで眠る彼女を起こそうとするものの、普段充分な睡眠を取れていないニイナが目覚める気配は無い。
「もう…」
小さく溜息を零し、今度は目の前のニイナで無くテレビの中のニイナを見つめる。
自分と共に演劇をしていた頃よりも、数段とレベルの高くなった演技。
彼女が映るだけで、どれだけ陳腐なシナリオのドラマだって、魅力的になる。
何年も音信不通だったニイナから連絡が来たのは、彼女がメディアに露出し始めてからのことだった。
半ば諦めながらもそれを待ち構えるかのように、あの時から連絡先を全く変えていなかった一葉。
勿論、彼女への特別な思いも。
【行かないで!貴方を………愛しているの!!】
テレビの向こうのニイナが、懸命に訴える。
久々に再会して突然、告白されるとは思わなかったが……お互いに気持ちが変わっていなかったと言うことが嬉しくて、気にならなかった。
ニイナは仕事が忙しくてなかなか一緒には居られないが、こうしてたまのオフ日は同棲するマンションでゆっくり過ごすことが出来る。
「ん……かずはぁ…?」
すっぴんで髪も乱れてて、Tシャツに短パンと言う無防備な寝顔を見られるのは…私だけ。
「おはよう、ニイナ」
あの時は、最初で最後だと思っていたキス。
もう…何回交わしたか分からないぐらい繰り返したその行為を、一葉は寝起きの大事な大事なお姫様にした。
END..
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