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可憐な立ち振る舞いに見とれていると、廉斗の目は華に向いていた。
「華、こちらは柳原志巻君……この前話しておいただろう?」
「えぇ、お父様。私の執事であり家庭教師である方でございますよね」
「そうだ。で、志巻君。もう君の採用は決まっているから、あとはよろしく頼んだよ」
廉斗はそれだけ言って、志巻の肩にポンと一度手を置き部屋から去ってしまった。
「……」
残ったのは、志巻と華の2人だけ。
「……え、えぇと、改めて……柳原志巻と申します」
「それさっきパパから聞いたよー。あ、私のことは華でいいからね。よろしく志巻君」
言いながら華は、側にあったベッドにボスッと音を立てて腰をおろした。
「は、はい……?」
返事をしながら、志巻はきょとんとしていた。
さっきまで凛とした印象の華は、廉斗が出て行ってしまった瞬間に雰囲気がガラッと変わった。
普通の女の子らしい口調、足を前後に揺らしてみせる仕草。
さっきまでの『お嬢様』 というオーラではなく、それはどこにでもいる『女子中学生』という感じだった。
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