誤解

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仲睦まじい慎治と真由美を見ていて心が痛んだのだ。 麗華に言われてあんな嘘の婚約祝いをしたことを後悔していた。 恐らく麗華さんには何か魂胆があったに違いない……と今になってタケルは思った。 恋人がいる慎治さんが、ただ誘って来る筈がない。 だから、友達の僕が婚約したことにして誘ったに違いない。 それからもう一つ、タケルには気になることがあった。 お酒の強い慎治さんが、ほんの2~3杯飲んだだけであんなに酔い潰れてしまい眠ってしまったことだ。 まさか慎治さんの飲むお酒にだけ睡眠薬を入れたんじゃないか。 まさか……。 まさかそんな事は考えたくは無いけど、もしそうだとしたら、僕は大変なことをしてしまったことになる。 でも、次の日麗華さんに聞いたら、慎治さんがいくら揺すっても起きないから、平手打ちをして起こして 帰らせたと言っていた。 だから、2人の間には何も無かったとは思うけど……。 でも……。 後味はとても悪い。 万が一あんな芝居をしたことが原因で〈慎治さんと真由美さん〉が別れることにでもなったら……それこそ大変なことだ。 謝って許されることじゃない。人の人生を狂わせることになるからだ。 お酒でも飲んで酔いつぶれでもしないと、良心の呵責で心が潰れそうになってしまう。
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