誤解

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「めぐみちゃん、そろそろ出掛ける準備始め無いと……」 通路の方から伸一郎の声がしたと思いきや、めぐみの後ろから顔を覗かせ「おはよう」と言った。 「伸一郎さんたち、出掛けるんですか?」 慎治が訊ねた。 「うん、今から旅行に行くんだよ」 「えっ、旅行? 仕事休みなんですか?」 「うん、有給取れたんでね。 ずっと残業続きでめぐみちゃんに寂しい思いをさせたから、お詫びを兼ねて旅行に行くことにしたんだ。 急に決めたからホテル取れないかなと思ったんだけど、ネットで調べたら空いててさ。よし、行こう……ってことになったんだ」 「平日だから取れたんですね。何処へ行くですか?」 「沖縄なの」 めぐみが嬉しそうに言った。 「今は冬だから暖かい所が良いねってことになって。ウフフ……実は子作り旅行なの」 はにかみながら伸一郎の顔を見て、めぐみが言った。 「…そうなんですか」 慎治が呟くように言うと、 「まあ、僕も年だし。早く両親に孫を抱かせてやりたいしね」 伸一郎がそう言うと、めぐみと見つめあって「ネッ」と言った。
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