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「お前がいつものようにパクったクツは運が悪いことに俺たちのボスのだったんだ。ここまで話はわかるか?」
俺の問いかけに男はコクコクとリズムよく頭を動かす。
「それでボスは怒り狂ってクツを盗んだ犯人を探させたわけだ。そうして俺たちが今ここにいる」
防犯カメラの映像をもとに街中の情報屋に聞き込み、俺たちがこの男のもとにたどり着くのに造作はなかった。
もし仕事をする際フードでも被っていれば、探す時間はかかったろうが、それも微々たるものだろう。どのみち俺たちはこのクツ泥棒の居場所を掴んでいた。それが今日か明日かの差だ。
「お前が盗んだクツはとても高価なものだったんだ。それを知らなかったのが運の尽きだな。今度からはよく価値を知っておくといい」
と、言ったものの、男が再びクツを盗み始めるとは思えないが。
「今からお前の左足を切り落とす。それでチャラにしてやる」
男は俺と武人を交互に見る。明らかに動揺している。足をガクガクと震わせて、落ち着きがなくなっていた。
男の左足はうっ血し、暗い紫色になってきた。切り落とすなら、今がちょうど頃合だ。
武人は男の目の前に、持ってきた道具を見せた。チェーンソーとノコギリ。
男の顔が一気に強張った。今から訪れるそう遠くない未来を想像したのだろう。
「今からお前の左足を切り落とすわけだけど、お前に選ばせてやるよ。チェーンソーとノコギリどっちがいい?」
武人の言葉に男は悩む。二つを交互に見る顔は、明らかに絶望に歪んでいた。それでも、より痛くないほうを選ぼうと必死になっているのがわかった。
「チェーンソーで……」
切れ味の悪そうなノコギリを選ばなかったことは称賛に値する。きっと俺でもそうするだろう。
しかし武人は恐ろしい男である。男の希望なんて聞くはずがないのだ。
「残念。チェーンソーはバッテリー切れで動かない」武人はにこやかに笑いながら言った。
男は震え上がる。武人のハンサムな顔が恐怖をより倍増させる。男の座っているカーペットがみるみる内に滲んできた。
「あぁコイツ、小便漏らしやがった!」
武人は男の脇腹を蹴って、切りやすいように横倒しにすると男の上に跨った。
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