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次に武人は錆びついたノコギリの刃を男の左足の付け根に当てた。
「いっくぞー」武人は子供のように無邪気な声で、ノコギリを引く。
しかし刃は男の足に引っ掛かり、思うように引くことができないようだ。
「よいしょー!」武人は歯を食いしばりながら力一杯ノコギリの柄を引っ張った。
同時に男の絶叫が室内に響く。破裂した風船のように弾けた足からはおびただしい量の血。壊れた水道管のように吹き出した大量の血液が室内を赤黒く染める。肉を押し切る音は聴くに堪えない。ギョリギョリと筋肉の繊維が切れる音がする。
「俺も頑張るから、お前も頑張ろうな」武人は足を切られている男を励ます。すでに武人の顔は男の返り血で、赤ペンキをぶっかけられたようになっている。俺から見ても武人は狂っているとしか思えない。
声にならない音を口から発し、男はぜぃぜぃと肩で息をするのがやっとのようだ。大量の汗が額から流れている。
「次いくぞ!」武人は大声で叫ぶと、思い切り引いた。最初よりもスムーズに刃が進んだ。「いいぞいいぞ! このまま行こう!」
血の池と化した男の足を武人は切り進む。
大量の血と汗。小便も混ざり、室内はおぞましい臭いで充満していた。先ほどの靴の山が発する臭いの比ではなかった。
「手伝うことあるか?」
「いいや何もない。抵抗するのを押さえつけるのも俺の楽しみだ。ブラックは外でタバコでも吸ってな」
プレゼントを開ける子供のような輝いた目で武人は男を見る。
なんだ、やはりさっきのロープ技術はSMサロンで教わったんじゃないか。
俺は二人の邪魔をしないようにとっとと部屋を出て、胸ポケットに仕舞ってあったマルボロに火を点けた。
近所の住人に怪しまれてないか辺りを見回すが、幸い誰もいない。
一息する前に早くも室内から絶叫が聞こえてくる。外からでも丸聞こえじゃないか。
俺は車に置いてきた猿ぐつわを急いで取りに戻った。
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