ハロー イン アイスボックス

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僕は浦和駅西口のバスロータリーにいた。 別にバスを待っているわけではない。気がついたら喫煙スペースのベンチに座っていた。 辺りは霧が立ち込めていて、すぐ目の前すらハッキリとは見えない。浦和駅とわかるのは、伊勢丹の看板の下に飾られている浦和レッズの選手たちの集合写真のおかげだ。 前の選手は中腰で、後ろの選手は背筋を伸ばして写っていた。 人の気配はない。駅前なのにタクシーも停まっていない。伊勢丹の入り口は開いていたが誰もいる気配がない。 今のうちなら店内の好きなものをいただいても、誰にもばれないだろう。しかしそれは無駄だと知っている。というか気がついている。 これは夢のなかだから。昔からたまに妙にリアルな夢を見ることがあった。 きっと今も浦和駅前にいる夢を見ているのだ。 夢を見ている、というのを自覚できるほど頭は明瞭としている。それは現実世界と寸分の狂いもなく、この世界が細部まで忠実に再現してあるおかげかもしれない。 小さい頃は公園。少し大きくなったら学校の教室といった具合に、僕の成長にあわせて夢の場所も変わってくる。 誰もいない遊園地にいったときは乗り物を好きなだけ乗った。 ニューヨークにいったときは無人のタイムズスクエアをフェラーリでぶっ飛ばしたこともある。 エベレストにも登った。ここは現実でも人と会わないかもしれないが。 とにかく僕はあまりにもリアルすぎる夢の世界を全力で楽しんでいた。
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