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 残り少ない自由時間を、堂々巡りするだけの退屈で孤独なボクの行進。目を閉じたまま歩き続けるボクの左頬を一匹の蜂が刺した。その痛みに飛び上がったボクが、はっきりと目を覚ました時、その痛みが温もりとなってボクを包み始めた。  アスファルトの路上に蹲ったボクは、通り過ぎる人達よりも低い位置から夜空を眺めた。何かが欠落している都会の夜空にウンザリした午前2時、同じ場所から夜空を眺めていた昔の自分を探しにゆく決意をした。  ボクは、振り込まれたばかりの最後のバイト代を、銀行のATMで引き出した。その足で駅を目指して歩いていたら、アルバイト先の店長とバッタリ出くわしたけど、無視して行き過ぎようとしたボク。けど結局見つかって呼び止められてしまった。その時に初めて店長の存在に気づいたふりをして白々しく挨拶するボク。 「あっ!こんにちは、お久しぶりです」 「どっか行くの?」  店長は、ボクが提げていた大き目のショルダーバッグを見ながら訊いてきた。 「いろいろあって、東京に行こうかなと思いまして・・・、すいませんでした。バイト急に辞めたりして」 「いや、それはかまわないけど、病気大丈夫なの?」 「今のとこなんとか・・・」 「みんなも心配してたよ」 「えっ!」 「もちろん病名は内緒にしてるけど、その辺のとこごまかすのけっこう苦労したよ」 「すいません」 「東京で、なんかやるの?」 「まだ何も決めてないんですけど」 「そっか・・・。けど、以前東京に住んでたよね?」 「はい」 「だったら平気か。俺なんかずいぶん行ってないからなあ。あっ、ちょっと待ってて」  店長は、そう言い残して、近くのコンビニに入って行った。  しばらくしてコンビニから出てきた店長は、所在無げに突っ立っていたボクにコンビニの袋を手渡しながら言った。 「餞別!」  袋を覗きこんでポカンとした表情を浮かべたボクを見た店長が心配そうに、ボクに訊いた。 「あれっ!マイルドセブンでよかったよね?」 「はい」  ボクは、相変わらず無表情だった。 「あ、まずかった、タバコ?」 「いえ、今でも日に一箱は、吸いますから。でも・・・、あっ、いえ、ありがとございます」 「俺、二箱、じゃ、無理せず頑張ってね」  店長は腕時計をチラッと見てから早足で歩いて行った。その後ろ姿を見ながらボクは、(店長ってイイ人だったんだ)って思った。そして人を見る目のなかった自分を反省した。  
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