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 ボクの頭の中でグルグル回り続けていた言葉があった。  それは、「残念ながら・・・」という保健所の先生の言葉だった。  二週間前に、HIV検査を受けたボクが、先週結果を聞きに行ったら、理由は教えられずに、「申し訳ないのですが再検査を受けてください」と言われた。  それから今日まで、1週間待つ間に、ボクは色々な事を考えた。 その末に一つの結論に達していた。 (再検査ってことは再確認みたいなもんで、結局は陽性だったんだろうなあ・・・) 「・・・残念ながら陽性でした」 「やっぱり」  結果を先生から告げられた瞬間、ボクは思ったままを口にしていた。それが、妙に照れ臭かったので、その時のボクは不自然な表情で笑ったような気がする。 「つきましては、HIVの拠点病院で詳しい検査をしていただきたいのです。その病院を保健所のほうから紹介させていただくことも・・・」  陽性だったとか、病院がどうとか、そんなこと、どうでもよかった。それよりも、"残念ながら"という言葉だけが頭の中をグルグルしていた。その言葉を口にした先生が、すごく申し訳なさそうな顔をしていたので、逆にボクの方が先生に申し訳ない事をしてしまったような気持ちにさせられた。 「お世話になりました」 頭を下げて部屋を出たボクは、保健所の駐輪場まで歩いて、ボクを待っていてくれたボクの自転車のサドルに腰かけて、タバコを一本吸った。  何も考えてなかった。蝉が鳴いていた。緊張していた自分に初めて気づいた。もう緊張はしてなかった。もちろん、ホッとしたわけでもなかった。  だけど、タバコはいつもの味で、ボクは何も考えてなかった。 そして、ボクとボクの自転車は走り出した。
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