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プロローグ:幼なじみ
カーテンの隙間から差す朝日が、新たな一日の始まりを告げる。
新学年が始まる日としては申し分ない天気なのだろうと思い、まどろみの中から現実世界へと帰還する。
ケータイを見ると、時刻は7時を少し回ったくらい。大半の中学生が起きている時間だろう。
「さて‥‥起きるか」
重い腰を上げて、ベッドから勢いよく飛び降りる。すると、ひんやりとしたフローリングが足から伝わってくる。春と言うべきには、まだ少し早いかもしれない。
「よっこらしょっと」
机の上に置いてあるカバンの中身を一通り確認する。今日は始業式だけだから、特に何も必要ないはずだ。
「着替えも終わったし‥‥‥‥ん?」
ベッドの上に置かれていたケータイから、爽やかなベルの着信音が鳴った。
「理沙か‥‥」
ケータイを開くと、案の定差出人は月野理沙だった。フォルダ毎に着信音を変えているので、爽やかなベルの音を聞いただけで理沙からだとすぐに分かる。一番メールをする相手なので、フォルダも理沙専用のものがあるくらいだ。
理沙とは家が隣であるばかりでなく、幼稚園からずっと同じ学校に通っている幼なじみだ。性格は物静かだけど、明るくて優しい性格だ。たまにドジなところもあるけど、オレのことをいつも気にかけてくれる、頼りになる幼なじみである。
『いつもの時間でいいかな?』
たった一行しかないメールだったが、理沙らしい優しいメールだった。
家が隣で学校も歩いて10分ほどの距離にあるため、用事がないときは一緒に行くことが多い。
『わかった。いつもの時間で』
そう返信し、階下へ向かった。
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