242人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
俺が怒っているのが分かったらしく、
今度は機嫌をとるように宥めてくる。
「悪かったって」
そう言って触れてくる掌は、
随分と大きくなっているし
あの頃よりも少し低い体温で。
だけど同じく変化している今の俺には、それが逆に心地いい。
何度も謝るその声も、
耳に優しく聞こえてくる。
「だってさ、ほんとにさ、
すぐ会える訳もないんだしさ」
自分でも何言ってんだと思うけど、
本人に愚痴ってどうするんだと思うけど。
そんな事を言ってると、
明之はまた、にやけ面に逆戻り。
「何なんだよ!」
俺の機嫌は急降下。
なんなんだ、その表情は。
「ごめん、嬉しい」
怒る俺の髪をかき混ぜながら、やっぱり笑う。
「俺の願いは、叶った?」
笑いながら、そう訊かれた。
「まあ、そうなんじゃない?」
ふてくされながら、そう答えた。
そしたら今度は、
俺の好きな、変わらない顔で笑うから。
……単純な俺は、
もう、怒る気分じゃ無くなった。
最初のコメントを投稿しよう!