父親の失踪

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それまでも、仕事と言ってはなかなか帰って来なかったが、ひと月以上帰って来ないことがあった これも母に後で聞いたことだが、父親は気に入らないことがあると仕事をすぐに辞め、職場を転々としていたらしい 『技術はあるのに、プライドが邪魔して、仕事を選んでいた 選ばずやってくれていたら、暮らしはもっと楽だった』 母は今でも、口癖のようにそう話す そのため、暮らしはきつくて、当時の父親の借金を返すのがやっとらしかった 父親が渡してくる十数万を借金にあて、母の給料で生活していたのだ そんなことは露ほども知らず、わたしは不満ばかりを言っていた 成長期にも関わらず、新しい洋服はなかなか買ってもらえず、ワンシーズン3着程の服を、ずっと着回していた 友達の服や登校カバン、靴や文房具など、キャラクターものや、リボンが付いたものだと、すごくうらやましかった 子供ながらに、貧乏なんだと痛感した
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