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とりあえず、マイクの前に立ってステージから新入生が座っている方を見渡す。
そう言えば、昨年もこんなだったっけ……
なんて、少し懐かしくなりながら俺は口を開いた。
「新入生の皆さん。入学おめでとうございます。『理事長のせい』で、新入生代表挨拶をないがしろにしてしまったことについては申し訳ありません。ですが、これも全て『理事長のせい』、ですので文句が有る人は理事長に直接お伝え下さい。」
そう言ってから一歩下がり、深々と頭を下げた。
食堂1ヶ月間無料ってのは流石にでかいからな。これくらいはしないと…。
まぁ、『理事長のせい』ってのは無茶苦茶強調したけどな腹立つから。
すると、俺の登場で一度静まりかえった講堂がまたざわつき出した。
「え、あの人誰?」
「先輩だよね。」
「すごいカッコイイ…」
「いや、どっちかといえばキレイ…かな?」
今いない自分の隣の座席の主がそんな風に言われるのを聞きながら、瀬戸君は人知れず溜め息をついた。
「やっぱり、深水君は目立つなぁ……」
昨年もこんなだったけど、やっぱり本人は気付いてないのか。
( ´△`)-O
そんなことを考えながら、今度は深呼吸するかのように息を思いっきり吸い込み、わざとらしく吐き出した。
そんなことなど露知らず、その頃、俺はさっきまで下げていた頭を上げ、またマイクに向かっていた。
「そういうことなので、すみませんが新入生代表挨拶はこれで切り上げて、私、深水 留意からお祝いの言葉を贈りたいと思います。」
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