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部屋から出ると長い廊下に出た。とても清潔感があり、床も壁も天井も真っ白で覆い尽くされている。
どことなく病院で見かけそうな風景だった。
「あれ? 蒼大君。検査はもう終わったのかい?」
「ん? ああ、篠山さん」
声をかけられ、後ろを振り返ると優しそうな男性が一人立っていた。
サラサラとした金髪のこの人は篠山 陽介。コアに関する『元』研究者であり、今は能力関係の指導に力を入れている。
そして、伊之場と同じように俺の世話をしてくれた人の一人だ。
「今日の出来はどうだったかい?」
「いつも通りっすよ、全然ダメ。……まぁ、分かってた事でしたけど」
「そっか……」
篠山は俺の答えを聞いて自分自身の事の様に悲しそうな顔した。
こういう時の篠山は本当に相手の事を思ってくれているというのが良く分かる。
優しく穏和で、周囲から信頼されているのも、このような性格である事が一番の理由かもしれない。
(伊之場さんとは大違いだな……)
「ん? どうかしたかい?」
「い、いや! 何でもないですよ! 少しだけ考え事をしていただけです……!」
さすがにこの人の前で悪口は言えない。
「ん? ならいいんだけど……。そういえば、蒼大君はもう帰るのかな?」
「あ、はい。そのつもりです。用事が出来たんで」
「そっか、なら途中まで一緒に行こうか。エントランスに行く予定だから」
そう言われ、篠山と一緒にエントランスへと向かう。
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