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「長い間検査はしてるけど、何の変化も見られないなんてね……」
「いっそのことやめてもいいくらいですけど、それは『無理』なんですよね」
「うん……、上からの『指示』だから反対は出来ないし……」
しばらく代わり映えの無い廊下を歩きつつ、そんな事を呟く。
俺はこんな検査を行い始めてから随分経つ。もうそろそろで半年になる。
普通ならすでに拒否しても構わないのだが、俺にはそれだけは出来なかった。
上層部からの指示によって検査の続行を命じられたからだ。
命じられた、と言っても伊之場から口で聞かされただけだったが。
「お偉いさんの考えてる事はさっぱり分かんねーっすよ。どうせなら俺なんか放っておいて新米さん達の育成にでも力入れればいいのに。」
「……もしかしたら、蒼大君の能力を知ってるかもー……なんて」
「どーだかね」
そんな会話をしていたら、エントランスに到着していた。
いつも思うが広い、すごい広い。エントランスだけで体育館程の大きさはあるんじゃないかと思う。
汚れなんて一切無い手入れの使用だった。白い内装が清潔に保たれている。
その中を多くの人達が行き来していた。
「それじゃあ俺はここで。お疲れ様でした」
軽くお辞儀をし、真正面の出入口に向かった。
「うん、それじゃあまた……あ、蒼大君!!」
篠山は何か思い出したかのようにハッとして、帰ろうとしていた俺を呼び止めた。
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