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「……どうかしたんすか?」
「あ、えーと……、さっきの話の事なんだけど……」
篠山は俺を呼び止めたのはいいものの、何を言おうか決めてなかったのか、少しまごまごとした様子だったが、やがて真剣な表情に、しかし温もりが感じられる顔で話し始めた。
「君は能力についてあんな事を言ってたけど、本当は君が陰でずっと努力してることは蒼大君を知ってる人なら誰でも分かってくれてる。伊之場さんだって、普段はあんなだけど、君のことを信頼してるんだ。だから……」
そこで篠山は一区切りし、こう言った。
「……諦めないで、頑張って」
「……!」
思い切り目線をこちらに向けて篠山は言った。
この人は今ちょっと恥ずかしい事を言ったという自覚が無いのか。
こちらの方が逆に恥ずかしくなり、思わず目を背けてしまった。
しかし、それが嫌というワケではなかった。
むしろ嬉しかった。励ましてくれることが。
少しして俺は笑みを浮かべ、
「それなら……もう少し頑張ってみますよ。それじゃあ、また」
支局を後にした。
***
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