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「でもまぁここまで来ると、能力が使える使えないなんてどーでもよくなりそうだが、毎回ボイコットもせずに真面目に来てるってことは、そう簡単に諦めがついたワケでもないんだろ?」
「……」
伊之場はイスをギシギシと揺らしながらそう言った。
伊之場の言っている事に間違いは無い。検査を始めたばかりの頃はあの『最低の桁』を見てショックを受けたが、なんとしてでも能力を使えるようになってやると決心した時があり、人一倍能力に関して学び、体力をつけていった事があったからだ。
「……まぁ、諦めたくはないですよ……」
俺は伊之場から差し出された検査結果を受け取る。
伊之場はそんな言葉を聞いて笑った。
「ははっ、良いんじゃねえの? そんな君の頑張ってる姿、嫌いじゃないヨ」
「……気持ちが感じられないのは俺の気のせいか?」
何だろう、少し馬鹿にされた気がする。
「はあ、俺も弱いのでもいいから能力が使えてればこんな事で悩まなくても済むんだけど……ん?」
ふと、ズボンのポケットから、メールの着信音が聞こえた。ケータイを開き、内容を確認する。
「いつものお友達かい?」
「そんな所ですね」
俺は伊之場からもらった紙を折り畳んでポケットにしまった。
「それじゃあ帰ります、お疲れ様でした」
「おう、お疲れー。気を付けて帰れよー」
俺はドアを開け、伊之場に会釈をして部屋を出た。
***
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