*prologue*

2/3
前へ
/33ページ
次へ
あれから何年、バレーをしてないんだろう。 俺は夕方の体育館から聞こえてくるバレー部であろう掛け声とボールの音に耳を傾けた。 男子の声に混じって女子の高い声も聞こえてくる。 マネージャーとかだろうか。 俺は適当にそう思い込んで、自分の手のひらを見た。 オレンジ色の夕日が俺の生ぬるい手を照らしている。 昔のテーピングだらけの手を思い出して、慌てて手を引っ込めた。 ふと気を抜くと、あの日の事が繊細に思い出される。 何を考えてんだか。いいじゃないか。 この学校に来たからには何もかも忘れよう。 もう、あの臭いユニフォームを着ることもない。 うるさい監督に従って練習することもないし、手にまめができることもない。 毎日、重いシューズを持ち歩くこともなくなるんだ。 これからは、ただ、地味に目立たなく生きていけばそれでいい。 そう思って、前を歩く両親の後を静かについていった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加