ロボット

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 朝、目が覚めると、洗面所へと向かい、そこで顔を洗う。顔を洗い終えると、昨日のうちに全自動洗濯機へと放り込んでおいたタオルを取り出して、顔を拭いた。  それから、朝食の準備をする。準備といっても、テーブルを拭いておくだけだ。時間になれば、洗濯機と同様、昨日のうちにセットしておいた全自動調理機が朝食を出してくれる。席に着き、トーストにバターを塗っていると、携帯端末が電子新聞を受信した。  朝食のパンにかぶりつきながら、片手でページを私はめくった。時代がどんなに進歩しようと起こる事件や事故に大差はない。新聞が終わると、今度は広告が表示された。チラシと同じであるが、進歩している分だけ、各社の目玉商品の紹介になると動画などが入り、他より目立っていた。  しかし、私は目玉商品の項目だけだけは読み飛ばすことにしていた。私はどうしても、その目玉商品が気に入らないからだ。小さな店舗から大企業まで挙って、目玉商品と紹介しているモノ。それは、『ロボット』だ。人間を模して作り上げた、未来の象徴ともいえるロボットが紹介されていた。  ロボットのどこが悪いと不思議に思う人もいるだろう。私の事を、一昔前の反ロボット主義者かと思われるだろうが、そうではない。別に私はロボットを否定している訳ではない。ロボットこそ、次の世代を担う人間が作り上げた素晴らしいモノだと確信していた。ところが、数ヶ月前、ロボット工業に異変が起こった。ロボットは人に近付けば、近付くほどに本物の人間との区別がつかなくなった。その外見が人に似すぎているが故に、それを犯罪に悪用する人間が出てきた。  主な利用方法としては、自分の身代わりに犯罪をやらせた。外見が人に似ているから警察は人間の犯行だと思い、どうしてもその姿で手配してしまう。  その他にも、人に近い外見的特徴を利用して、人間をロボットだと偽り密入国させる者。非合法で人身売買に利用する者。  人類の望みを叶える為に生み出したロボット達が皮肉にも、人間の欲を刺激し世界を悪しき方向へと導いてしまった。  このままでは、犯罪は増える一方と考えた国連は、国際的な法を制定するに至った。ロボットの姿が人に近付き、多岐にわたっているのが問題であり、それを規制する必要があった。犯罪に使えぬよう、基準となる姿が定められた。
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