ロボット

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 ロボットに外見に男女は求めず、各国の人々の姿を統計し平均した姿をロボットのあるべき姿だとした。平均にしたのは、どの国でも不具合なく使えるようにする為である。あまりにも、外見が他と離れ過ぎていると違和感を覚え、購買意欲が阻害されてしまうからだ。  すでに販売されているロボットは全て回収され、全ての外見が基準に基づき作り直された。  規定の対象外のロボットは管理された場所で働くか、裏取引でしか扱われなくなった。人間似のロボットによる犯罪が無くなった訳ではないが、それでも一時に比べて犯罪は激減した。  そういう訳で、どの広告もロボットの機能に差はあるが、外見はどれも同じロボットしかいなくなった。私は、外見が同じロボットを見ていると、イライラしてくる。だから、ロボットの広告には、あまり目を通さないようにしていた。  同じ理由で、私の家にはロボットはいない。全ての家事や掃除は自分でやるか、個々で買った各種の全自動機がやってくれる。 「やれやれ、こんな時間か」  時計をみれば、いつの間にか出勤の時間が迫ってきてた。さっさと、残りの食事を食べると、食器を食洗機に入れ、 「今日の夜は、同窓会があるんだ。夕食はいらないよ」  全自動調理機に注文を入れてから、出掛けた。  季節は真冬。私は温度調整機能が取り付けられているコートを着て出掛けた。もちろん、風邪予防のマスクも忘れない。  マンションの自宅を出れると、表では人々が急がしそうに会社に向かっていた。その大多数の人はロボットを付き従えている。荷物持ちをさせたり、自分を担がせた会社へと向かう人がいた。きっと、彼らはちょっとした王様気分なのだろう。  ロボットの普及に伴い、電車サイズも変更となってた。一人一人が、それぞれロボットを従えているので、人の数が同じでもスペースは二倍になってしまうからだ。 「きゃ!痴漢!」  車内で女性の悲鳴が聞こえた。そちらに目をやると、痴漢を働いたとされる男が、女性の命令に従ったロボットによって取り押さえられていた。
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