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「いててて。俺は何もしていない!」
男は自分は無実だとロボットに訴えるが、ロボットは離しそうにない。人間と違い、力を緩めるということは絶対にしない。
どうなるのかと、私は出勤の合間のちょっとしたトラブルに目をやっていると、女性に従っているロボットとは別の・・・とは、言っても、外見に区別はないが、ロボットが口を挟んできた。
「お待ちなさいお嬢さん。私は、この方のロボットですが、彼は何もしていません。彼は、以前に痴漢と間違えられたことがありました。二度と同じ目に遭わないよう、私を購入したのです。私の内蔵されたカメラには終始、彼の行動が記録されています。間違いなく痴漢はしていませんし、お嬢さんには接触していません。嘘だと思いなら、私の保存データを確認しましょう。すぐに、彼の無罪は証明されます」
ロボットは実に流暢な喋り方で興奮する女性を宥め、説得した。ロボットの記憶ほど確かものはない。人間のいい加減な記憶とは違い、確実にそれにまつわることを記録しているのだから。
「けれど、私は触られました!その時、後ろにいたのは人は彼だけです!彼に間違いありません!
「確かに、後ろにいた人は、私の持ち主だけです。しかし、触れていないのは事実です。そして、私はお嬢さんを触った人を見ていました。もっとも、それは人ではありませんが」
「何ですって?」
「お嬢さんを触ったのは・・・」
まるで、ロボットは名探偵にでもなったかのように、本当の犯人を取り押さえた。
「このロボットです」
ロボットが取り押さえたのは、また外見が同じではあるが、別のロボットだ。外見に似ているだけにややこしく思う。
「このロボットが?」
女性も驚いているようだ。
「ロボットは人間の命令に忠実です。人を傷付ける、殺すといった命令には従いませんが、このロボットはお嬢さんに触るよう命令されたのですよ。このロボットの製品ナンバーを解析すれば、誰が所有者であるか、分かるはずです。その人物こそが本当の痴漢です」
駅に電車が到着したと同時に逃げ出す中年の男が現れた。すぐに、そいつが痴漢だと察した人とロボットが一斉に飛び掛かり、取り押さえた。
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