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帝都アルソンクは、四方を山の峰に囲まれたすり鉢状の広いくぼ地に広がる都市である。
ようやく山道を抜けたテレー一行は、道の終点にある北の要塞を抜け、帝都の市街地へと下る道に入った。要塞の内側から市街地へと続く道はやや荒れてはいるものの、全面をレンガで舗装されている。テレーも従者たちも、これまで越えてきた山道を思えば、レンガの間からところどころ生えている雑草などはまったく気にならなかった。
市街地に近づくと、遠くから太鼓や笛の音が聞こえてきた。この日、帝都では、ラティス帝国が誇る英雄の帰還を歓迎する盛大なパレードが予定されている。タムタムと軽やかに響くリズムは、喜びに満ちあふれていた。
市街地に入る手前では、軍本部から迎えによこされた兵士たちが英雄の到着を今か今かと待ちわびていた。遠目にテレーの姿を認めると兵士たちは急ぎ駆け寄り、旅の労をねぎらう言葉もそこそこに、急いでテレーをパレード開始地点へと案内した。
「テレー中将。長旅でお疲れのところ、痛み入ります。もうすぐパレードが始まりますので、よろしくお願いします」
申し訳なさそうに、しかし有無を言わせない語気を漂わせ、白い制服の役人がテレーににっこりと笑いかける。
テレーは作り付けた笑顔でやんわりとうなずくと、花や金銀の装飾を豪勢に盛りつけられた馬車の背に乗り込んだ。
つる草で綺麗に飾り付けられた手すりに片手を置き、テレーは地に目を落とす。にぎやかに盛り上がる人々の熱気の一方で、歓迎を受けるテレーの方は、今朝姿を消した相棒のことがまだ胸に引っかかっていて、気分は晴れなかった。
パレードの開始を告げるファンファーレが、盛大に鳴り響く。
もう出発だというのに伏し目がちに視線を落としたままのテレーに、周囲の者たちも困った様子で手もみした。
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