Infinite Love

2/13
前へ
/13ページ
次へ
「今度の日曜日、どっか行かないか?」  彼のその言葉に、わたしは「えっ‥‥」と言って、少し困惑した。  わたしこと寧々と、彼ドモンが付き合いだしてから、半年が経とうとしてる。  これらはもちろん、ハンドルネームで、最初に知り合ったのは、長崎の地域SNS<たまりば>の中だった。  どこか気が合うものがあったのか、お互いの日記にコメントしあううちに、やがて実際に会うようになり、ある日突然告白されて、つきあい始めた。  考えてみたら、今月に入ってから、まだ一度もデートしてない。  わたしの方も、会いたいなーと思っていた頃だった。  でも‥‥。 「ごめんなさい、友達と約束しちゃったの‥‥」  わたしは、誘いを断るしかなかった。  しばらくの沈黙。  携帯電話越しにドモンが、何か、考えこんでいるのが、わかる。  やがて、彼の重い声が聞こえた。 「おまえ、最近、俺のこと避けてないか?」 「そ、そんな、そんなことない!」  わたしは慌てて否定する。  そんなわけ、ないじゃない。  こんなに好きなのに‥‥。 「ごめん‥‥いろいろ、友達につきあわされて、忙しくて‥‥」  どんな言葉も、言い訳にしかならない様子。  ドモンは煮えきれないまま、そのまま会話もとぎれ、歯切れの悪いままに電話越しの「おやすみなさい」を言った。  電話が切れた後も、しばらく、わたしは携帯を手にして、溜め息をこぼさずにはいられなかった。  わたしには、彼には言えない秘密がある。  次の日曜日に、友達と約束があるのは、本当の事だ。  わたしには大事な、戦友とも言える、友達たちだった。  次の日曜日、その友達たちと、わたしは、同人誌即売会で、自分の書いた同人誌を売る。  彼に打ち明けきれない、私の秘密。  それはわたしが、腐女子だってこと‥‥。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加