0人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしは鏡を見ながら、自分の格好をチェックしている。
SNS<たまりば>には、今日のファッションと称して、自分の格好を写真に撮って、日記に上げている人もいるけれど、今のわたしの格好を日記にあげる勇気は、まだ無い。
わたしは幕末のサムライのような格好をしていた。
いわゆる、コスプレだ。
『薄桜鬼』という、女子向け恋愛アドベンチャーゲームに登場する、沖田総司というキャラクターのコスプレをしていた。
名前からわかるとおり、実在した幕末の新撰組の一人をモデルとしているので、時代劇に出てきそうな、男物の着物を着て、男装していた。
わたしは背が高いので、男装が似合うねって、良く言われる。
こうして鏡を見てると、ほんと、似合ってるなーって、吾ながら思ったりもする。
オタクにも、いろんなジャンルのオタクがいて、わたしは言わば、乙女ゲー(女子向けのゲーム)オタクだ。
『薄桜鬼』や『遙かなる時空の中で』といった、女子向けゲームが大好きだった。
さらに突っ込んで言えば、それらに登場する男性キャラクター同士の絡み(性的な意味を含む)を想像することが、大大好きだった。
その、「好き」をいう気持ちを三次元的に表現したのが、わたしが丹精込めて書いた同人誌と、こうしてコスプレすることだった。
わたしの彼ドモンは、わたしが、こういう格好をしている事は知らない。
わたしがオタクで腐女子だということは、秘密にしたまま。
ドモンは、バイクとサーフィンが趣味のアウトドア派で、完全なるインドア派なわたしとは、まったく正反対だった。
そんな二人でも、共通の話題があって、その共通の話題が、この、幕末の話。
ドモンは、坂本龍馬を尊敬していて、大河ドラマの『龍馬伝』も熱心に見ていた。
デートの時に、坂本龍馬や幕末関連の史跡巡りツーリングをした事も、何度かある。
鏡に映った自分の姿を見ながら、その時の事と、こないだの電話の事を思い出すと、胸が締めつけられる想いになる。
ダメよ、ダメ。
今、わたしは沖田総司。
凛として振舞わなきゃ。
最初のコメントを投稿しよう!