Infinite Love

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 わたしは鏡を見ながら、自分の格好をチェックしている。  SNS<たまりば>には、今日のファッションと称して、自分の格好を写真に撮って、日記に上げている人もいるけれど、今のわたしの格好を日記にあげる勇気は、まだ無い。  わたしは幕末のサムライのような格好をしていた。  いわゆる、コスプレだ。  『薄桜鬼』という、女子向け恋愛アドベンチャーゲームに登場する、沖田総司というキャラクターのコスプレをしていた。  名前からわかるとおり、実在した幕末の新撰組の一人をモデルとしているので、時代劇に出てきそうな、男物の着物を着て、男装していた。  わたしは背が高いので、男装が似合うねって、良く言われる。  こうして鏡を見てると、ほんと、似合ってるなーって、吾ながら思ったりもする。  オタクにも、いろんなジャンルのオタクがいて、わたしは言わば、乙女ゲー(女子向けのゲーム)オタクだ。  『薄桜鬼』や『遙かなる時空の中で』といった、女子向けゲームが大好きだった。  さらに突っ込んで言えば、それらに登場する男性キャラクター同士の絡み(性的な意味を含む)を想像することが、大大好きだった。  その、「好き」をいう気持ちを三次元的に表現したのが、わたしが丹精込めて書いた同人誌と、こうしてコスプレすることだった。  わたしの彼ドモンは、わたしが、こういう格好をしている事は知らない。  わたしがオタクで腐女子だということは、秘密にしたまま。  ドモンは、バイクとサーフィンが趣味のアウトドア派で、完全なるインドア派なわたしとは、まったく正反対だった。  そんな二人でも、共通の話題があって、その共通の話題が、この、幕末の話。  ドモンは、坂本龍馬を尊敬していて、大河ドラマの『龍馬伝』も熱心に見ていた。  デートの時に、坂本龍馬や幕末関連の史跡巡りツーリングをした事も、何度かある。  鏡に映った自分の姿を見ながら、その時の事と、こないだの電話の事を思い出すと、胸が締めつけられる想いになる。  ダメよ、ダメ。  今、わたしは沖田総司。  凛として振舞わなきゃ。
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