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七月。
うだるような暑さの中
ドイツ内の、ある会社の一室では20人もの大人たちが、コーヒーや団扇片手に仕事をしていた。
社員の大半が、コピー機のインク変え、書類の整理、報告書の制作等仕事に追われてる中、
暑さに耐えきれず自分のデスクに上半身を預けている、弱冠16歳の少年がいた。
ーー暑い… なんなんだこの暑さは。ふざけているのか…?
エアコンが故障…早く直せよ…
いじめか、いじめなのか。
それとも太陽は僕に喧嘩を売っているのか…?
ふっ…
「面白い…上等だ。いつかお前を…必ず、金に変えてやる……!」
「何馬鹿なこと言ってるんですか?文句ばかり言ってないで、さっさと仕事してくださいよ、団長」
「…ん?」
テノールの声で団長、と呼ばれた少年は、いつの間にか自分の目の前に立つ長身の男を見上げた。
「おい…暑苦しいぞ、アルト。スーツのジャケットまで着て……。暑さで頭をやられたんじゃないのか?」
げんなりした顔でそう言って、彼は再度、茶色い頭をデスクに預ける。
「正常です。それと私の名前はアルベルトです。いい加減覚えたらどうなんです?」
「はっ、相変わらず減らず口だな。小姓のようにうるさいぞ。もっと上司を敬え」
「何が上司を敬えですか。生憎私は、あなたを上司だと認めた覚えはありませんよ」
それより。
そういって、アルベルトは数十枚の書類を横になってる彼の顔の前に置いた。
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