3人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁ、わかった。
やるよ、お化け役」
俺は零と西城に、気のないような返事をした。喜び飛び上がる西城の横で、零が僅かに目を丸くする。
「翔太、本当に良いのか?」
やってくれと頼んだのは、零じゃないのか?と心の中で突っ込みを入れつつ、俺は頬を軽く掻きながら、返事をした。
「あぁ、俺ももう子どもじゃないんだ。
それくらいはいくら苦手でも、やり遂げてみせるさ」
決まった。普段は抜きん出ているところもなく、かといって落ちこぼれているところもなく、いわゆる平凡過ぎて目立たない俺だが、今なら少しは格好良く見えたはずだ。頼む、そうであってくれ。
零が何か言いかけたその時、俺は勢いよく腕を引っ張られ、ガタガタと音を立てて立ち上がった。
「さあっ!
そうと決まれば、南部君の衣装を考えなくちゃね!
採寸その他諸々やるから、今すぐわたしと来て!」
「ちょ……零は?」
俺はどんどん西城に引っ張られ、慌てて零の方を振り返る。くそっ!零のやつ、無表情過ぎて、考えている事がわかんねぇ!ただ、零は俺と西城をじっと見ているだけだった。
「キタコレさんは、総監督だからいろいろ忙しいみたいよ?
心配しなくても、そのうちお化け姿も見てもらえるから、大丈夫よ」
いや、別に見てもらいたいなんて思っているわけじゃなくてだな……と思いつつも、零をもう一度見ると、今度は別のクラスメイトに話しかけているところだった。あぁ、俺に惚れなおしてもらうチャンス、来た、コレ!だったはずなのに、呆気なく失敗に終わってしまったぜ。
凹んだ俺は、西城に引っ張られるがままに、廊下へと出た。そのまま廊下の最奥に位置する、多目的室へと誘われる。
部屋に入ると、埃っぽい臭いが鼻を刺激し、数々のお化けの衣装用の布を持ったクラスメイト達が待ち構えていた。ちょっと予想外デス。
「さぁてと。
衣装スタッフのみなさーん!
予定通り南部君がお化け役やってくれることになったから、採寸してどの衣装にするか決めるよ!
昼休みも残り少ないんだし、ちゃっちゃかやるわよ!」
パンッと手を叩きながら、ニッコリと満面の笑みを浮かべた西城が、全員に呼びかける。予定通りって、どういうことだよ!
抵抗する間もなく、俺へのお化け改造計画は着々と行われるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!