出会い

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時計の針は夜の11時を回った。と言ってもデジタル時計なので時計の針が回ったという表現は適切でないかもしれない。 「実存だね!」 そう言った私の顔に笑みがこぼれた。何年も会いたかった。彼女の顔を見たかった。 「久しぶりー!」 彼女が笑いながら自分に接近し、そのまま自分の体を通り過ぎて行った。 「えーーー」 彼女が実体がないのは十分承知していたが、こんなにも衝撃的な体験をするとは思わなかった。まず彼女の移動が平行にスライドするということ。リニアモーターカーのようにわずかに地面から浮いた彼女の体は素早く自分の体を通過していった。
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