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僕の恋人である道理はないという意見は無効だ。哀れなお姫様を助けるのは、その恋人や王子様だと決まっている。こうして一箇月の果てに今だなおその歩みを進める僕こそ、彼女の恋人であるはずなのだ。
僕はただ歩き続ける。そこにリサがいると信じて。そうして信じているからこそ、そこには必ず彼女がいる。
彼女がどのくらいの未来まで進んでいたのかは判らない。けれど生きていればこそ、もしもここで足踏みをしていようとも、僕はずっと未来へ進んでいける。
僕はいつか最後の一段に足をつけ、そこにあるドアを乱暴に蹴り飛ばす。するとそこには両の目を真っ赤にしたリサがいて、僕に対してこういうのだ。
「遅いよ。ばか。淋しかったのに。悲しかったのに。なんでもっと早く来てくれなかったの。ばか。もう知らない。知りたくもないよ」
僕はひどく困惑するだろうが、それでいい。もしも帰りの階段が同じだけ続いていようとも、この部屋に二人閉じ込められてしまったとしても、彼女がそこにいてさえしてくれれば、それだけで十分なのだ。
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