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「もしもし…」
どうしてか分からない、ゆうりに電話を掛けていた。もしかしたら、ゆうりの声が聞きたかったのかもしれない。
「もしもしりょう?具合大丈夫?」
「あ、あぁ…あの、ゆうり…」
「ん?」
「俺…その…」
「…りょう?」
「部室っ…部室で、見た、んだ…その、ゆうりとっ…先生」
「いっ、言わないでっ…!」
耳に響くゆうりの声。
「言わないで…」
荒々しいゆうりの声。
…聞いたことのない、ゆうりの声。
「りょう…絶対先生には言っちゃだめ。絶対に。」
「でもっ…またゆうりがっ…!」
「りょう、僕は大丈夫だよ…?あんなの全然耐えられるから。だから、りょう…お願い。言わないで…?」
今にも泣き出しそうな声。先生に言われるのを恐れているから?それとも、凄く凄く辛いから?
「いつでも、俺らに頼ってよ…」
「うんっ…分かってる…じゃあ、また学校でね」
電話が切れたと告げる機械音が、悲しく聞こえた。
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