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その声は、どこまでも透き通っていた。そして、不思議と心の傷が癒えるのを感じた。
「貴方は……?」
『私は(自称)絶対神、焼おにぎり。人々は私を救世主と呼びます』
普通ならば、胡散臭いと切り捨てていただろう。
彼女は、無防備にも私の間合いに入ってていたし、正直なところ隙だらけだったから。
しかし、私はただそれを見つめていることしかできなかった。
訂正しよう。
隙だらけだったのは、私のほうに違いない。
おそらく、突然目の前に現れたこの女性が、女神を偽ったパンの騎士だったのなら、私の胚芽は呆気なく摘み取られていたであろう。
『貴方はとうに気付いているはずです。この世界が、間違った方向に進んでいることを』
「──!!」
『貴方に、私の全てを授けます。この力で、世界を真なる姿──“焼おにぎりの理想郷(ヤキオ・ニギリ)”に近づけるのです!!』
そこからのことはあまり覚えていない。
私の身体は聖なる焔に包まれ、気付いたときには、私は焼おにぎりになっていた。
「世界に平和(焼おにぎり)を──!!」
私は誓った。
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