第1話

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その足が、少し、また少し動いてはコンビニ袋から見え隠れする。 どうも無造作に置いたコンビニ袋の無数の膨らみが、ヤツの行く手を阻止しているらしい。 僕はそっと立ち上がると、ヤツに気づかれないよう殺虫剤と一度使ってそれきりの割り箸を取りに台所に向かう。 こんなヤツと床まで同じになっては適わない。 そう思い、コンビニ袋をそっと動かす。 きっとヤツは思っただろう。 ――見つかった!と。 こいつらは不思議だ。 ジッと息を潜めている癖に、目が合ったと思う瞬間に素早くなる。 一体、どこに目があるのか、正直分からない。 それでもヤツは一瞬、チラッと見て慌ただしく異常なくらいたくさんある足を動かす。 どんなに急いでいても、たくさんある足が絡まらないから不思議だ。
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