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機嫌悪いなぁ…なんて思いながら、美優の方へ歩き出した。
すぐに辿り着いて、大丈夫?と話しかけた私の手を引いて、美優は歩き出した。
それにつられて歩き出した私たちの背中に、低くて耳に心地良い声がかけられた。
「待てよ姉貴!!その人胡桃さんだろ!?」
不意に名前を呼ばれ、立ち止まり振り返った私を、彼は真っ直ぐに見つめていた。
「美優…あの子が美優が話したがらなかった弟くん…?」
強引に手を引こうとする美優に必死に抵抗しながら問いかける。
「そうだよ。あたしの弟。血の繋がりなんてない、紙の上だけの姉弟だよ」
普段滅多に駄々をこねない私の態度に、観念したのか泣きそうな顔で渋々答えた美優は、それでも振り返らない。
学校では笑顔を絶やすことのない美優が、こんな顔をするのはよっぽどのこと。
美優の家は両親が再婚同士で、体が弱かった弟くんを特に可愛がったらしい。
だから必死になって勉強して、進学校に入ったんだ。こっちを向いてくれると思ったから。
いつかふとした瞬間に苦笑しながら話してくれたことを思い出す。
悲しみを纏った背中を少し見つめ、再び弟くんの方を見る。
弟くんは真っ直ぐにこちらを見つめたまま、不機嫌そうな顔で尚も近づいてくる。
彼との距離が短くなればなるほど、自分との背の高さの違いに驚かされた。
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