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MTFを開き画面の表示をみて、見なかったことにしようと思った。
表示された相手の名前は――松林明人。
死んだ父さんの親友の息子で、機関師の青年だ。
年は確か僕より二歳下の15歳だ。
そいつも南雲同様また何かと僕に絡んでくる。
僕は何か面倒ごとを手伝わされると思い、無視しようとした。が、
「成実うるさいぞ~寝かせてくれだぞ。むにゃむにゃ。」
と自称僕の相棒でありペットでもある狐――幻影――に言われ、MTFを取り発信ボタンを押した。こいつが本格的に起きるとうるさくてかなわないので仕方なく、だ。
「松林、何の用だ」
「いきなりかよ! おまえなぁ、もしこれが詐欺師からの電話で『そうそう松林。実は事故っちまって今すぐ1000万ほど振り込んでくれない?』って言われたら、どうするんだおい。まぁ、お前のことだからディスプレイの表示をみて俺だと判断したんだろうけど、もう少し危機管理をした方がいい……」
「それよりも何の用だ? 僕は今忙しいんだ。用件があるなら早くしてくれ」
松林の注意を中断させる。このままいくと注意が説教に変わり何時間も電話の前で怒られることになるだろう。
「忙しい? 面倒事を引き受けたくないからってそんな嘘つくんじゃねえよ。ちゃんと、おまえの幼なじみの四葉さんにおまえの予定聞いたぞ。今暇してるって」
おまえはストーカーかと心の中で突っ込みを入れる。
それよりも四葉、なんでお前は僕の予定を断りもなく把握しているだけではなく松林にも言うんだ。
今頃鳩の世話をしている四葉に恨みを向けつつ、松林の話を聞いた。
「実はさぁ、親父と未来がさぁ、この前おまえがくれた栗金時がうまくってもう一度食べたいってうるさくってさ。あれ自分で作ったの?」
「職人が作って、僕はそれを買っただけだ」
「……素直に店で買ったって言えよ。ややこしいなぁ。まぁいいや、どうせ暇してんだろ。道案内してくれよ。結愛と三人で栗金時買いに行かねえ?」
「拒否権は?」
「ない!」
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