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「さっき連絡があって、財布忘れたから取りに帰ってから来るって」
ありゃ、明人君はやっぱりそそっかしいなぁ。
珍しく成実さんと二人っきりか……、いつもなら明人君か幻影君がいて騒いでるのに…
…
…
……会話が進まない。基本的に成実さんはしゃべらない人だし、私も自分からあまり話さないし……ん?
成実さんの右手、何かで切った痕がある!?
「成実さん!!!」
「なんだよ、そんな大声で。静かにしろって……」
「右手どうしたの!?」
「……いや、なんでもないよ。」
そう言って成実さんは右手を私から隠そうとするけど、私はの右手を掴んでとめる。
成実さんは観念したのか、「今日の昼、お嬢が食器割って拾っている最中に切っただけだ」って言ってくれた。
私はいつも持ち歩いている小さいバックから消毒液と絆創膏を取り出し、治療を始めた。
「もういつも怪我したら言ってって言ってるでしょう」
「かすり傷で病院に行くやつはいないだろ。それに松林には大きな怪我をしたらきてねっていてるじゃないか」
「明人君はちゃんと自分で消毒したりするけど、成実さんはしないでしょ」
全く成実さんは相変わらずそういうことに対しても無頓着なんだから。
治療が終わった頃に、成実さんのMTFが突然鳴り、それをものすごく速いスピードで成実さんがとって、少し会話して共用スペースのドアに近づいて開くと、そこには明人君の姿があった。
「よっ、成実!それに結愛!」
「あっ、明人君……、って明人君もどうしたの!?その足血でてるじゃない。」
「さっき走ってきたら転んじまって…結愛悪いけど、消毒液と絆創膏貸してくれない?」
「うんいいよ。」
「サンキュー。」
私はさっきまで成実さんに使ってた消毒液と新しい絆創膏を明人君に渡した。
「もう!急ぐ気持ちはわかるけど、だからって怪我しちゃだめだよ。別に急がなくても私も成実さんも明人君がくるのを待ってるよ」
「でも、結愛は昼からも仕事があるだろう。成実も暇をしているのをわざわざ付き合ってくれてるから急がないととおもってさ……」
「だったら、最初から一方的に約束するな。」
「しゃあねぇだろ、未来と親父がうるさいんだから。『成実が前に持ってきた栗金時を食いたい!』って」
「はいはい、もうみんなそろったんだから行こうよ、ね」
私は今にも口喧嘩をしそうな2人を止めて成実さんのアパートを出たのだった。
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