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俺の元上司は這いつくばって、ケージをこんこん叩いいては飼い猫を急かしとる。
「うわぁ、雑ぅ」
「雑ちゃうわ!」
「怖がってるんちゃう?」
「細かいこと気にしとったらあかんで、たつ!これから上に立つような人間はな、どーんと構えとかんと!」
俺がビミョーな表情を浮かべているのを見ながら、15センチ下で微笑んでいたヤスは、俺に目配せしてから村上君の方へちょかちょか歩いて行って、隣にしゅっと屈んだ。
「ちぃちゃん言うん?」
「おん、ちぃや」
「俺にやらせてもらってもええ?」
「おん」
飼い主に承諾を得ると、ヤスは穏やかな顔でケージの中の臆病な猫に話しかけた。
「ちぃちゃ~ん。出ておいでぇ。怖ないでぇ」
ヤスの声音に安心したんか、ちぃちゃんはそろ~っとケージから出てきて、ヤスのちっさい手のひらに乗った。
「おお!出よった!」
横山君が世界で二番目に可愛いて言うてる目をまん丸にしてびっくりしてる村上君。
どや、俺のヤスはすごいやろ?
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