おいでよチャチャチャ

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* キラキラしてたヒナの目ぇが、途端にゆらゆら揺れる。 ごめん、ちゃうねん。そんな顔すんな。 「ちょ、ヨコ!なんでや!なんで辞めんねん!」 「最後まで聞いて。ヒナちゃん」 まっすぐ過ぎる瞳を見つめながらそう言うと、ヒナはちっさく「ごめん」って言うから、俺も曖昧な返事しつつ、浅黒い手の上に自分のなまっちろい手のひらを重ねた。 「俺な、今、資格とろ思て、勉強してんねやんか。それ、受かったらな、この会社辞めて、起業したろ思てんねん」 「うん」 「研修受けててつくづく感じたけど、やっぱり俺、上からなにせぇ、これせぇ、言われて動くタチちゃうっつーか、なんか、自分でなんでもやりたい人間なんやろな」 「…せやろな」 「それにな、俺、お前と一緒におりたいわ。この会社におる以上、人事に振り回されるワケやし、お前が東京で実績上げたらしばらくは東京(そっち)やろ?俺も大阪(こっち)でそこそこ基盤できつつあるし。同じようなポジションの人間、同じトコにふたりもいらんやん。多分、俺たちこれから一緒の部署で働くいうんは、実際無理やと思うで。」 「……」 「だからな、会社作って、お前と一緒に暮らすんが俺の夢やねん。まだ資格もとってへんし、軌道にのるまで時間かかるから迷惑かけるやろけど____……ぶっ!お前、なんちゅー顔してんねん!」 目の前で目ぇ潤ませて、鼻広げて、泣くのを一生懸命我慢しとるヒナを見たら、思わず噴き出してもうた。 「笑うやつがおるかっ!」 「ひゃひゃひゃひゃ!……ごめんごめん」 堪え切れなかったヒナの涙をぬぐって、赤くなった鼻にキスした。 びっくりした顔のヒナに俺は満足して、むふって含み笑った。 ヒナはへにゃって笑って、俺のゆるんだネクタイを乱暴に引っ張ると、強引に唇を合わせてきた。 俺の後頭部を片手でロックして、全く解放する気ゼロ。 そのまま何度か口を合わせてたら、だんだん深めのキスになるやん。 流れで舌入れたりなんかしてたら、お互いの身体がその気になってきてしまうやん。
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