君にささげよう

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しばらくするとヤスの仕事部屋から物音がした。 俺は口にうな丼詰め込んだままヤスを見ると、ヤスがぱっと立ち上がるんで、2人でこっそり仕事部屋を覗く。 物音がするチェストの抽斗を恐る恐る開けると、ちぃちゃんが中で爪を研いでた。 どうも、チェストの背板と抽斗の間から抽斗の中に侵入して熟睡しとったらしい。 よっぽど居心地がええのんか、抽斗があいてもきょとんと俺たちを見上げるばっかりで、逃げようともせえへん。 俺がそっと抽斗を閉めて隣を見ると、ヤスが声も出さんと泣いとった。 震えてる頭をぽんぽん叩いたら、俺に自然にしがみついてきたんで、意外としっかりした肩を抱き寄せてヤスが落ち着くまで頭を撫でた。 「……良かったぁ~。殺されんですんだわ…」 「え?なに?物騒やな」 「ちぃちゃんおらんくなったら信ちゃんに殺されるかもと思って」 「それはないやろ!____いや、あるか」 「どっちやねん!」 「どっちでもええやん、もう済んだことや」 て、ヤスをお姫様抱っこしたら、「うわーーーーっ!」ってヤスが素っ頓狂な声を上げる。 「ど、どこ行くねんっ」 「どこでしょね~」 騒ぐヤスを無視して寝室に向かい、ベットに降ろしてそのままキスした。 舌入れようとしたら、ヤスが真っ赤な顔でむくれて「これ以上はあかん」って言うから、「なんで?」って聞いた。 「…かっこええ」 「え?」 「なんか、一日会わんかっただけで、なんかむっちゃかっこええて思ってしまって、今更照れる」 「あっはっは!なにゆーてんの。顔隠さんで。見せて」 両手で顔を覆ってしまったヤスの短い腕を掴んで開く。 「いややぁ。猿みたいやもん」 「俺が好きや言うてるんやからええやろ?___な?」
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