君にささげよう

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* 「たっちょ、ごめん。俺、よくわからんこと言ってもた」 “むちむちしてきたな”ちゅう俺の腕を枕にして、ヤスは泣き腫らした目で俺を見るから、「だいじょぶや」て言うてほっぺたをつねった。 「なぁ、……いけたんちゃう?」 「ん?なにがぁ?」 「や、その___後ろでさ」 「あっ」って叫んだ後、ヤスはでっかい目を更におっきくして俺を見た。 「そぉか!だから俺今日変やったんやぁ!ヤスダショータ、大人の階段を一歩上りましたっ!」 て、敬礼ポーズ。 「あっはっは!脳内花畑になったり、階段上ったり忙しいなぁ」 「たっちょん、ありがとぉ!」て俺に顔近づけるから、「お礼言われるようなことなんもしてへんわ」て言うて細い体を抱きすくめた。 「_____さっき、“好きって言うな”って言ったの、覚えてる?」 ヤスは腕の中で黙ったまんまやったから、俺はそのまま続けた。 「答えになってるかわからんけど、俺、ヤスとしてるみたいな感じではもう二度と、誰ともできひんと思うねん」 「…」 「ヤスはもっと、欲張りになってほしい。もっと、俺を必要としてほしい。___お前に甘えてばっかりやけど」 ヤスは「頼りにしてんで」って言うて、にっこり笑った。 その笑顔があんまりきれかって、かわいかったから、音が出るぐらい強く抱きしめた。 「痛いわぁ~」 「今、ふたりでここにおることは、どっちにしたってほんまのことや」 なぁ、章大。 好きって言うたら何かが終わるとか、未来が決まるンが怖いなんて思ってくれてるってことは、優しすぎるお前にもちょっとは欲がでてきたってことやろ?
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