青木

2/2
前へ
/8ページ
次へ
万事休す。 休す休す窮する。 青木は頭の中から必要な情報を拾い上げようとするが、全て失敗に終わった。 「けけけけ結婚記念日か!?いや、違うな、お前の誕生日はクリスマスだし……母の日も父の日も過ぎたよななな」 目の前にいる妻は青木の半分くらいの大きさしかないが、性格はキツい。 彼女と口喧嘩すれば、富士山だって裸足で国外に逃亡するに違いない。 青木の妻は、眉をキュッと吊り上げた。 青木の胃と大事なところはキュッと縮んだ。 食卓の上には皿。 皿の上にはごはん。 ごはんの上におはぎが乗っかっている。 おはぎは青木の好物だが、この盛りつけは斬新だ。 「今日は何の日?」 妻の質問に青木は答えられなかった。 「……ごめんね、どうしても思い出せないよ」 青木はしっかりと皿は掴んで答えた。 引っ込められたらかなわない。 「あんたの誕生日でしょうが」 すっかり忘れていた。 青木は、清々しい思いでおはぎを噛みしめた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加