36人が本棚に入れています
本棚に追加
万事休す。
休す休す窮する。
青木は頭の中から必要な情報を拾い上げようとするが、全て失敗に終わった。
「けけけけ結婚記念日か!?いや、違うな、お前の誕生日はクリスマスだし……母の日も父の日も過ぎたよななな」
目の前にいる妻は青木の半分くらいの大きさしかないが、性格はキツい。
彼女と口喧嘩すれば、富士山だって裸足で国外に逃亡するに違いない。
青木の妻は、眉をキュッと吊り上げた。
青木の胃と大事なところはキュッと縮んだ。
食卓の上には皿。
皿の上にはごはん。
ごはんの上におはぎが乗っかっている。
おはぎは青木の好物だが、この盛りつけは斬新だ。
「今日は何の日?」
妻の質問に青木は答えられなかった。
「……ごめんね、どうしても思い出せないよ」
青木はしっかりと皿は掴んで答えた。
引っ込められたらかなわない。
「あんたの誕生日でしょうが」
すっかり忘れていた。
青木は、清々しい思いでおはぎを噛みしめた。
最初のコメントを投稿しよう!