ミサ

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あたしことオカダミサは、12歳にしておかみさんと呼ばれている。 遠足に行けば先生に間違われ、バスに乗れば子供料金を払うたびに疑われる。 不本意だ。 「なあおかみさん、算数の宿題見せてくんない?ほら、斑の忘れ物グラフ、うちの斑ダントツだからヤバいだろ?」 「誰のせいでダントツなのよ!ぜーんぶあんたのせいだ!」 そう、となりの席のアリハラユウジは問題児だ。 忘れ物だらけ、宿題はしない、授業中に寝る、つくえの中にえたいの知れないものが入ってる。 「だからおかみさんの出番だって。おれ、死ぬ気でノートうつすからさ」 バーカバカバカ。 そこで死ぬくらいなら、死ぬ気で宿題してこい。 ホントのところ、あいつが宿題どころじゃないことを、あたしは知っている。 仕事がいそがしいお父さんやお母さんの代わりに、弟さんや妹さんの面倒を見るのは、あいつの仕事だ。 あいつから聞いたわけじゃない。 朝も夕方も、あわてて保育園にかけこむあいつを見ちゃったんだ。 「へっへ、おかみさん、いいもんやる」 なにげなく出したあたしの手に、置かれたのはアマガエル。 「キャーキャーさわぐと思ったの?」 あたしはあいつをにらんで、カエルを投げつけた。 「いや、思わない。おかみさんだもんな」 ゲラゲラ笑いながら、あいつはあたしが貸したノートを返してきた。 授業中、ぱらぱらとノートをめくっていると、見覚えのないきちょうめんな字が目に飛びこんできた。 『いつもごめんな、ありがとう』 風が音を立てて窓から入ってきて、寝たふりをしたあいつが一つくしゃみをした。
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