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埼玉へ客をを送り届け、都内にある会社に戻り、本日の仕事を終えようと思っていた藤田(仮名)。
帰り道に、割と大きな幹線道路を走っていると雨が降ってきたそうです。
「おっ、コレは最後に都内までの客でも乗せられるかな…」
そんな事を考えていると、幹線道路に面した大きな病院の前で傘もささずに手を上げている若い女性が立っていました。
何の迷いも無く車を寄せ、その女性を乗せる事にしました。
「どちらまで?」
藤田が行き先を尋ねると、女性は静かに行き先を告げました。
「神奈川県の青葉区までお願いします。」
藤田が望んでいた都内とは反対方向だったものの、思わぬ上客に喜んでいました。
話かけても返事をせず、その女性はずっとうつむいたままだったので、話かけるのをやめました。
目的地であるその場所は閑静な住宅街でした。
女性に指示された家の前に車を停め、ドアを開け金額を告げました。
「32、490円になります。」
「・・・。」
藤田が振り返ると女性の姿はありませんでした。
「クソッ!やられた!」
車を降りて辺りを見渡しても女性の姿はありません。
辺りをキョロキョロしていると、女性が指示した家から人が出て来ました。
「どうかされましたか?」
振り返ると人の良さそうな中年の女性がドアから顔を覗かせていました。
「困りましたよ、埼玉からココまで若い女性を乗せて来たんですけど逃げられちゃって…」
「そうでしたか、それは大変でしたね。でも、ちょうど良かった。実は今からタクシーを呼ぼうと思っていたんですよ。」
「そうですか。どちらまで行かれるんですか?」
「実は、長い間入院していた娘が亡くなったと病院から連絡があって、埼玉の○○病院なんですけど、お願いできますか?」
藤田は病院の名前を聞き背筋が凍りました。
藤田が乗せて来た女性も○○病院から乗せて来たからです。
勿論、その家族を乗せ○○病院まで行ったので、踏み倒されたその金額は戻ってくるかたちになったそうです。
写真を見て確認したわけではないので確かな事はわからなかったそうですが特徴を聞くと藤田が乗せて来たその女性にとても似ていたそうです。。。
藤田さんは霊の存在は信じない方で、この話をとても明るく話してくれました。これからはタクシーに乗る時は、みなさんも聞いてみてはいかがでしょうか?いい暇つぶしになるかも…
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