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いったいどれだけの数がいるものか、それは合唱でもするように重なり合い、荒れ果てた空間に響き渡っていった。
いくら四方を壁で囲まれているとはいっても、これではひとたまりもない。
破壊され尽くすのは、もはや時間の問題かと思えた。
「……こりゃまた、えらい大勢さんでのご訪問だ」
それを、丸い屋根の上から眺める人影があった。
暮れ逝く夕陽を受けて、朱に染められる塊は、二つ。
「ちょっとばかり骨が折れそうだな。いけるか?ケイティ」
ひとつは中年をやや越した男性。
四十を間近に望む頃合いだろうか、ぼさぼさに伸びて肩を越す長さの髪をして、精悍に削げ落ちた輪郭には無精髭が浮いている。
裾が何カ所も引き裂かれたボロボロのマントを巻き付けるようにまとって、しゃがみ込んでいる。
手には、大きな剣が握られてあった。
柄には引き金が付いている。湾曲した切れ味の鋭そうな刃の根元に、ぽつりと銃口が開いていた。
特別製の銃剣だ。
「問題無い。俺ひとりでも一掃できる」
応えるのは、長身の青年。
足場が悪いのにもかかわらず、両の脚で真っ直ぐに佇み、それら、の潜む荒野を見渡している。
無駄のない、すらりとした身体つきだった。しかしただの痩身でない事は、ひたりと張り付くような黒い服の上からでも解る。
ぴん、と伸びた背中から引き締まった腰へ、そこから力強く伸びる脚へと続くしなやかな筋肉の線。
く、と軽く膝を曲げる動きにさえ、内側に秘めた力の存在をうかがわせる。
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