第1話「3分間と10分待て」

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 ピピピピピピピピ! と3分後に設定されたタイマーが小うるさい音を響かせながら、自身の存在を高らかに示している。  その直ぐ近くで椅子に座っている赤と黒が入り混じった髪の少年が、机に置かれたタイマーの音を無関心に止めた。少年の関心はタイマーの横に置かれている煙突形に形作られた発泡スチロール、の中身に向けられている。  重り代わりに置かれていた携帯電話を退かし、蓋をビリビリと開け、フォークを片手に黄色く軽い弾力のある長細い麺へと喰らいついた。  そのままもぐもぐごくん、と喉仏を上下に動かし咀嚼する。                 キサキ  アカネ  時間は午後6時30分。少年――木崎 朱音の夕食は、カップ麺1つだった。  食べ終わった発泡スチロールの中を台所で水洗いしてからゴミ袋に放り入れる。夕食前に洗っておいたコップと箸とスプーンを拭き食器棚に入れていく。箸スプーンフォークにはそれぞれ専用の入れ物があるのか、長細い入れ物に詰めていった。  そこで携帯電話が短く3回ぶるぶると震えた。タオルで両手に残った水分を拭い、机に放置したままの携帯電話へ手を伸ばす。  シュカ! とスライド式の携帯電話を開き操作する。どうやらメールが届いたようだ。  内容を確認した朱音は、ソファーに洗濯から出したままの黒いジャージズボンに穿き替え、黒い肌着にフードの付いた長袖の白い上着に着替えた。  そのまま玄関に行き。サンダルを両足に履いて、4月の夜へと歩み出た。
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