3人が本棚に入れています
本棚に追加
女性も店員に紅茶を頼み、カップを両手で包むように持ち冷えた体を向かいの席で温めている。
「いや~、夜は寒いね~。ゆたんぽゆたんぽ」
店員がフライドポテトの入った小さな籠を乱暴に置き、幾つかポテトがテーブルに落ちる。『さっさと出て行け』と態度が言っている。
「嫌われてるね~朱音君」
向かいに座った女性は笑顔のまま、変わらず明るい声ではきはきと喋る。
「此処だけじゃない。そっちでもだろ」
「くすっ。それもそうだね」
勝手に朱音が注文したフライドポテトを食べながら女性はくすくす笑う。見る者全てを元気付ける様な笑顔、それが偽物だと、演技だと朱音は感じている。
仲良く成る気など無いくせに、他人には仲良く映る様に振舞う女性を朱音は気持ち悪く思い嫌悪している。
素直に周囲の人間の様に軽蔑した目で見られた方がマシだと朱音は心の中だけで思う。
「で、今回は何処なんだ」
「そんなに急がない急がない。予測ではまだ時間有るから、それに近くだから何時もよりは余裕があるよ」
「毎回その言葉聞いてるんだが、毎回余裕のよの字すら無いよな」
「あ、あはははは。予測は飽く迄も予測だからね!」
「とっとと出るぞ」
「ちょっちょ!? まだポテトが残って」
「食ってれば? 場所は大体感じるから」
自分が頼んだコーヒーとフライドポテト、後々面倒に成りそうな予感を感じ、渋々女性の紅茶の御代も払い、飲食店を出る。
最初のコメントを投稿しよう!