第1話「3分間と10分待て」

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 朱音が自身の勘に従い歩みを進めていると、1つの大きな公園に着ていた。朱音は周囲を一瞥すると、誰も居ない事に安堵の溜め息を吐いた。 「ここ、だな。まだ《門》は開いてないな」  そう小さく呟いた瞬間、まるで計っていた様なタイミングで朱音の頭上の空間が歪み始め、夜空よりも黒く平べったい物が下向きで顕現する。 「いい加減慣れた。とっとと出てこいよ、バケモンが!」  数歩下がりながらポケットから温めていた手を出し、頭上の黒い穴を見上げる。するとその穴から何かか勢い良く落下し砂塵が巻き上がる。  砂塵が落ちつき、落下した何かが月光に照らされはっきりと肉眼で見る事が出来る。  落下してきた何かは狼の様に四足歩行し、強靭な体躯は軽く見ただけで2mは有る。低い唸り声をあげ朱音を警戒している。  公園の頭上に開いた黒い穴と、2mを越える狼から、異物感のある力が湧き出ている。そしてその異物感のある力は渦を巻いて朱音に吸い込まれていく。  朱音に吸い込まれた異物感のある力は朱音の体の中心に集まり、浄化され、異物感の無くなった力となり朱音の全身に血の様に廻り出す。  赤と黒の入り混じった髪の毛が赤単色に染まり、体中に複雑な模様が浮かび赤く煌びやかに輝きだす。  突然光り出した朱音のそれを危険だと本能が告げたのか、2mの狼は予備動作すら無く硬く固まっている地を抉るように蹴り、全身のばねを使って常人では見えない速度で朱音に飛び掛る。
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