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舌打ちをしながら受けられないと判断する前に体が無意識に狼の突進を躱していた。
「思ったよりも速いなっ」
狼の様な姿から速いだろう事は分かっていたが、朱音の予想よりも狼は圧倒的に速い。
もしも躱す事が出来なかったら、そう思うと心臓の鼓動が2倍速に成った様に錯覚する。震えそうに成る脚に無理やり力を込め震えを力付くで抑え付ける。ガチガチと鳴る歯を鬱陶しく思い歯が欠けそうな程力を入れ噛み合わせる。噴き出す汗を拭う事もせず一直線に狼を睨み付ける。
ただ直線に突っ込むだけでは無駄だと判断したのか2mを越える狼はじりじりと距離を詰める。絶対に仕留める事の出来る距離に成るのを焦らず待つ。
朱音の視線と狼の視線がぶつかった。
刹那、今度は朱音が地を抉って飛び出す。
予想外の行動に狼が一瞬たじろぐ、狼よりも速く目前に迫る朱音に本能が反応し、真っ直ぐに打ち込まれてくる右腕の拳を噛み千切ろうとその大口を開け凶悪な牙を剥き出しにする。
朱音の右拳に集中した視線の外から、左拳が狼の右目に抉りこんだ。
そのまま拳を振り切ると、2mの狼は軽く浮かび上がり、体勢を崩した状態で着地した所為で後退を余儀なくされる。
潰れた訳ではないが、狼は右目を閉じ左目だけで朱音を睨み付け、低い唸り声をあげる。
朱音は目を潰せなかった事に舌打ちをする。
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