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自宅の和室の仏壇の前で、前田敦子は手を合わせていた。
何を祈るわけでも、願うでもなく、ただ目をつぶった。
前田は、納得したように少し頷きながら目を開き、「じゃあ、いってきます」といった。
前田父「なんだ。もう行くのか」
前田はうん、と小さく答えながら立ち上がり、鞄を肩に掛けた。
前田父「いってらっしゃい、部長」
前田はすかさず父を睨んだ。
前田父「なんだよー。怖いな」
前田「部長って呼ばないで。いってきます」
前田は足早に玄関に向かい、靴を履くと玄関のドアを強めに閉め、出ていった。
前田父「・・あれか。・・まだ、前の部長が亡くなったことに、気持ちの整理がついてなかった、か。しまったな」
前田の父親は頭をぽりぽり掻いて、新聞を広げた。ふと仏壇を見ると、死んだ妻がやんちゃに笑っていて、彼は少し泣きそうになった。
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